これまで具体的に計算した数字は見たことがありません。試算してみると、多少過大ですが、日本の海洋プラごみ発生量の3%~9%になります。(年間で1,600トン~5,640トン)

漁業系プラごみの大半は外国由来 ー日本の漁業者主犯説は誤解ー
2年前のG20大阪サミット以降、日本の海洋プラスチックごみ汚染の主犯は日本の漁業者であるかのような誤った認識が社会に深く浸透、定着しています。
今回、当機構では、この誤った認識を払拭すべく、HP等で公開されている環境省の 報告書や資料等をもとに、独自に検証を行い、その結果を「漁業系プラごみQ&A」としてとりまとめました。
これまで具体的に計算した数字は見たことがありません。試算してみると、多少過大ですが、日本の海洋プラごみ発生量の3%~9%になります。(年間で1,600トン~5,640トン)
当然、地域差はありますが、環境省の平成 27 年度及び 28 年度のデータに基づいて試算したところ、外海に面した日本の海岸に漂着した漁業系プラごみ(全漂着プラごみの6割)のうち、日本由来のものは5%以下、外海に面した日本の海岸に漂着した海洋プラごみ全体からみれば3%程度というのが妥当です。
また、外海に面した海岸に漂着したプラごみの殆ど(8割以上)は、外国由来と考えられます。なお、日本の内湾・内海の海岸に漂着したプラごみについては、漁業系プラごみも含めて、そのほぼ全てが日本由来です。
1.地域差が大きいので一概には言えませんが、漁業系プラごみの割合が増える特殊な事例を除けば、重量ベースで 15%前後と考えられます。
2.前述の特殊事例としては、長年清掃が行われていない海岸であるとか、直前に嵐が襲来したとか、付近で漁業施設に被害が生じたとか、漁業の盛んな地域であるとか、外海に通じる海峡や水道に近い場所(外国産が混在している)とかの事例が考えられます。
環境省のデータに基づいて計算すれば、平成27年度当時に日本の海岸にあったプラごみは 14,000 トンとなります。また、外国由来のプラごみは日本の漂着プラごみ全体の7割、日本由来の漂着プラごみは3割です。外国由来の漁業系プラごみは外国由来の漂着プラごみの7割、日本全体の漂着プラごみの5割です。なお、日本由来の漁業系プラごみは漂着プラごみ全体の4%程度にすぎません。
日本列島を取り巻く海流が外国(特に東アジアの大陸)から多くのごみを日本列島の沖合に効率よく送り届けます。そして、沖合に届いたこれらのごみは、日本列島に吹き寄せる季節風により、日本の海岸に漂着します。
1.環境省が、「漂着ごみ対策総合検討業務」の一環として、日本周辺海域の漂流ごみの起源(発生地)を推定しています*。(次頁のシミュレーションの結果を参照)
2.このシミュレーションの結果を見ると、外国を起源とするごみが、いかに多いかということが分かります。 (特に、九州及び日本海沿岸は顕著です)
数字は様々ありますが、中国政府が発表している数字に基づけば、平成30年で中国は 2,314 万トン/年、韓国政府の研究者の論文によれば、平成16年で韓国は 15.2 万トン/年(うち漁業系プラごみは 10 万トン/年)です。一方、日 本の6万トン/年(平成22年)に対応する数字としては、中国 353 万トン、フィリピン75万トン、北朝鮮12万トン、韓国1.3万トンです。
日本の海岸に漂着したプラごみは1年程度の短い期間で漂着・流出を繰り返しているようです。短期間での漂着・流出については、過去の調査・研究でも確認されています。一方、漁業系プラごみ、特に漁網、ロープについては、砂に埋も れるなどして同一の海岸に滞留しやすい傾向にあり、長い期間清掃を行っていない海岸では、漁業系プラごみの割合は相対的に高くなる傾向にあります。
あまり、漁業系プラごみの割合が高い低いで一喜一憂しないことです。漁業系プラスチックごみの割合が高くても、ごみの絶対量が少なければ大きな問題ではありません。実際に浜に行けば、どこにごみがあるのか(目立たない、見つ からない)ということも、しばしばです。